NGO SESCO 論考 NO.40号 大阪コリアタウン― 鶴橋商店街と生野コリアタウンを訪ねて ―
暑い!暑い!今年の夏は酷暑、猛暑、暴暑、釜茹状態の日々でした。が、8月31日(木)鶴橋へ出掛けた。かねて多文化共生の観点から関心を持ち20年前に勤務していた大学の非常勤講師「ソウル書林」李 慈勲(リ ジャフン)さんを訪ねた。ところが移転後、廃業されたのか電話も通じず空振りに終わった。
生野区の外国籍市民は、2023年3月現在,区の人口約12万6千人のうち、外国人は2万7千人で21.8%を占め大阪市内24区で最も多い。国籍は60ヵ国以上に上がり、多い順に韓国・朝鮮、ベトナム、中国。日本による植民地時代に、大阪と韓国・済州島を結ぶ定期航路があったことなどから、朝鮮半島から多くの人が移住したという。
鶴橋商店街 同振興組合事務所を訪ねる。事務局 堂上博史、飯尾和子両氏からこの商店街について話を伺った。終戦後に始まり現在は200店舗、9割以上が韓国人の店舗で主な通りが11班。事務所を後にして狭い通路を見て歩く。キムチ、もんじゃ焼き、チチミ、焼き肉など食品関係が多いが勿論店舗には婦人服、カジュアル、肌着、民芸品、靴、鞄、宝石・時計・アクセサリーなど狭い通路にひしめいている。来訪者の多くは若い男女だ。
生野コリアタウン 御幸通中央商店会コリアタウンにある事務局を訪ねたがこの日は閉まっていた。従いネット情報によるが「御幸通の3商店街は1600年の歴史ある御幸森神社のお膝元、東西500mほどに150店舗が軒を連ねる商店街です。大正時代にかつて猪飼野と呼ばれたこの近隣が人口増加に伴い市街化していく中、大阪市立鶴橋公設市場が開設され、旧市電「猪飼野駅」続く一条通商店街と交差する位置であったことから賑わいを見せ始め、国内にある他と同様な商店街として発展してきました。」「ところが昭和50年代後半頃から陰りを見せ始め、最初期の渡航者から数えると50年程経つ中で、在日韓国・朝鮮人の生活様式の変化、日本経済の成熟、後継者の不在などいくつかの要因が重なり、来街者が目に見えて減少した。そんな時危機感を覚えた当時の商店主たちが、御幸通を新たな顧客を呼び込むため特色ある商店街として訴求していく“コリアタウン構想”を掲げた。特徴的な門や舗装道路が完成し、日韓共同ワールドカップ、冬のソナタの韓国文化への関心が高まると注目を集めるようになった。現在では買い物客だけでなくフィールドワークや社会見学、修学旅行の来街者も年々増加し、国内でも特異な商店街の一つとなった今、多くの目的で来られる来街者と地域に寄与できる商店街に邁進する」と。年間来訪者数200万人+。汗を拭きふき東西500mを歩く。店からの声掛け多く、結構な人出だ。
大阪コリアタウン歴史博物館 徳山物産創業者である洪呂杓さんが2003年日韓文化交流施設「班家食工房」を建設し20年目にあたる今年4月歴史資料館を設立した。館内には現在から過去へさかのぼる形で展示品が並べられていた。
「いくのコーライブズパーク」 今年5月に新複合施設が御幸森小学校に設置された。多言語の本が並ぶ図書室。地域の災害時避難場所の役割を残しつつ、多国籍の人々が暮らしやすい多文化共生の拠点を目指す。当日は催しもなく静かであったが。
さて、冒頭の多文化共生から話題は移民問題に移る。2023年7月31日 産経新聞の 朝刊一面、「クルド人殺到 おびえる市民」「病院周辺に100人 救急5時間半停止」川口市とある。三面に、「クルド人念頭 差別や対立の意図ないが・・」「市議会 苦渋の意見書」。その左には大きく「英、不法移民に苦慮」「密入国者4年で150倍 / ルワンダへ移送困難」と。
不法移民に関してアメリカでは、メキシコ(中米各国)からの不法入国トランプ前大統領の違法移民政策の強化、メキシコ国境壁の建設。イタリアでは、今年7万2千人以上の移民が上陸し制御不能といい、イギリスではジョンソン元首相のリビアなどからの難民受け入れに協力したルワンダ支援。スナク政権下のイラク、シリアからの若者の殺到する現下は迷走中。独政府メルケル首相時代2018年は100万人移民受け入れの大失敗。フランスではパリ郊外で去る6月アルジェリア系移民二世が射殺されて「移民対警官」問題再発、30年間も続いている。「パリ五輪」は大丈夫か。アフリカから押し寄せる地中海を渡る難民の人命救助は優先すべきだが入国・在住は慎重に。では、各国はどうすれば良いのか。基本拒否。不法滞在者は即時強制送還すべし。あくまで自国で解決すべきだ。先進諸国は資金援助などを通じて自国で解決すべく支援に回る。長期的には政治、経済、社会の底上げを図りつつ国の安定に努める事にある。人口減少の日本において移民政策は重要課題である。外国人の受け入れは良質の人々に限る。やがて移民は二世、三世と社会を築いていく。将来像を描いて取り組まなければならない。「郷に入っては郷に従え」。川口市の場合、市行政、外国人(クルド人)代表、住民代表に加え経験・知識豊富な国際間関係者の知恵を交えて多文化共生の視点で話し合うことにある。魔法の杖はない。大事なものは何か。国家が崩壊する前に対策し、調和を取りながら外国人受け入れを進めていくことになるであろう。
鶴橋・生野コリアタウンを歩くことから始まった先に、サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドン、デユッセルドルフ、バンコック、ホーチンミン、マニラ、ジャカルタへと世界各地に存在する「日本人街」へ思いが至り興味津津、深まって行く。
追記 : 鳥越皓之著『琉球国の滅亡とハワイ移民』(吉川弘文館 2013)が面白い。
<引用・参考文献>
・地域ニュース「多文化共生の拠点に―生野コリアンタウンに新複合施設」産経新聞 2023.6.27
・「大阪コリアタウン歴史資料館」 パンフレット 2023.4.
2023.9.10
NGO SESCO 副理事長 深尾幸市