NGO SESCO 論考 NO.52号 「日本の織物 スゴ技を体感」日本経済新聞から
1963年4月私は大学を卒業して大阪に本社のある紡績会社に就職した。入社後経理を学んだ後原綿課に配属された。最初はテトロン、ナイロン、カシミロン、エクスラン、ボンネル、エステル、ダイネル、アセテートなど合繊原料を扱い、次いで世界の綿花、アメリカ、メキシコ、ニカラガ、ガテマラ、ホンデュラス、ブラジル、エジブト、スーダンとあり、一時期は毎日検品も行い品質仕分けに精をだした。約8年後東京秘書課へ転勤した。1980年からは、アフリカ・ナイジェリアにある日・ナ合弁会社へ赴任、経営の一端を担いアフリカン・プリントと付き合った。アレワ紡績は日産30万ヤード、従業員4000人の西アフリカ最大の生産工場であった。次いで1984年から当時の西ドイツ・デユッセルドルフに駐在し、欧州市場を担当した。業務の中心はフランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、パリ、マルセーユのファッションショーの報告と来欧者アテンド業務。フランスの若き有望なデザイナー探しもあり、華やかな業界を見聞した。この経験から自然に繊維の原料、紡績、織布、加工、仕上げに興味関心が向いた。
日本経済新聞の土曜版に特集記事「プラス1」があり、今年7月27日に標題が掲載、面白いのでこれに依拠して紹介したい。日本ファッション・ウイーク推進機構理事 太田伸之氏他6名の専門家によるランキングが以下の通り。
1位 舟久保織物 山梨県富士吉田市手間暇かけた「ほぐし織」
「布をほぐして織るからっ『ほぐし織』。今年創業100年の舟久保織物では、全国でも珍しい技術を間近で見学・体験できる。織機にセットされた布地は縦糸に仮の横糸を通し、のりの入った染料であらかじめ模様をプリントした『仮織り』という状態だ。職人が布地に手を差し込んでサクサクほぐし、横糸を除くと糸の状態に戻る。これを再び織ると微妙なずれが生じ、かすれた模様の生地になる。『和装の絵絣と趣が異なる、色や輪郭をぼかした優雅な高級布』である」
2位 福田織物 静岡県掛川市 世界屈指のコーデュロイ
「1964年創業の福田織物は畝で複雑な模様を作るなど、高い技術で日本の『ミナペルホネン』などの著明ブランドから注文が相次ぐ。」
3位 木玉毛織 愛知県一宮市 希少な「ガラ紡」で綿糸紡ぐ
「ガラガラと回転する金属の筒に詰められた綿をつまんで先に紡がれた糸につなげると見る間に新しい糸が紡がれていく。ガラ紡は明治初期に長野県出身の発明家、臥雲辰致が発明し、明治期に愛知県三河地方で広まった。」
4位 tamaki niime mura 兵庫県西脇市 五感で楽しいものづくり
デザイナーの玉木新雌氏設立。「織りや染、縫製、販売などを一貫して手掛け、伝統的な播州織りの技を生かしたショールや服を制作している。」
5位 フュージョンミュージアム 和歌山市 ホールガーメントを体感
「ニット編み機大手の島精機製作所が運営する博物館。同社が開発した、縫製しなくてもニットの服が編み機から完成状態で出てくる『ホールガーメント横編み機』を見られる。
6位 Labo 奈良県広陵町 ペダルをこいで靴下編み
自転車をこいで編み物体験ができる施設。全国一の靴下産地である奈良県広陵町で1927年に創業した靴下メーカーの運営で、『チャリックス』と呼ばれる装置で靴下を編める。3色の糸から好みの3色を組み合わせ、自転車をこいで編み機を動かして自分だけの靴下を作る。」私的思い出、同期親友故竹尾徳治が退職後、ユネスコの活動の中で広陵町の靴下に関わり資料出版もしている。」
7位 近江上布伝統産業館 滋賀県愛荘町 糸作りで知る麻織物
「室町時代から続く国指定の伝統的工芸品『近江上布』
の技法や歴史、素材の麻にについて学び、体験できる.
8位 下川織物 福岡県八女市 3代目に学ぶ久留米絣
日本三大絣の一つ久留米絣。1948年創業の下川織物は産地である福岡県筑後地方に残る数少ない織元。
9位 檻の資料館 白山工房 石川県白山市 玉繭から生まれる伝統の紬
国指定伝統的工芸品の牛首紬。2頭の蚕が作る1つの繭『玉繭』の糸を使い、独特の凹凸がある。白山工房は繭から糸を取るところから織までを見学できる。」
9位 クミヒモエクスペリエンス バイ ドウミョウ 東京都新宿区 親子で組みひも作り
1652年創業の組ひもの老舗が昨年4月に開設した本格的体験施設。職人が使うものと同じ木の道具と絹糸組みひもを作る体験。」
いずれも歴史の裏づけがあり、織物、編み物の深い繊維の世界が楽しめる。
<引用・参考文献>
「プラス1 日本の織物 スゴ技を体感」「日本経済新聞」2024年7月27日
2024.9.10
NGO SESCO 副理事長 深尾幸市