NGO SESCO 論考 NO.34号 「幸せに生きるために」

NGO SESCO 論考 NO.34号 「幸せに生きるために」

 最近、書店に行くと「幸福」「しあわせ」の指南本が目につく。「ウエルビーイング」(心身の健康や幸福)を求める人々が意識を高めているからであろう。日本経済新聞「やさしい経済学」シリーズから今回で3回目になるが、京都大学准教授 柴田悠氏の標題「幸せに生きる方法」について社会的・政策的要因を含めた視野での考え方を紹介したい。

幸福感がもたらすメリット

「米カルフォルニア大学のソニア・リュボミアスキー教授らの研究によれば、生活水準などが同じでも幸福感がより高い人は、他者の利益を意識した行動に向かう傾向や、仕事の質・満足感・収入がより高く、人間関係がより豊かでした。また、負傷・疾病・死亡リスクがより低く、寿命が7.5年程長い事も分かっている。」「幸福感を高める方法も調査や実験で多数発見されている。お勧めが3つ。『味わって食べる』『経験を味わう』『「自然と触れ合う』」但し「幸福感に焦点を当てる」と弊害も発見される。「幸福感を求めると幸福感を得られない」「落とし穴」もある。

簡単に実践できる3つの方法

「味わって食べる」では、習慣は学歴や所得と有意な関連がない。「経験を味わう」では、経験を一緒に味わってくれる人は、あなたを幸福にする。「自然と触れ合う」では、「自然の豊かな公園で20分以上過ごすと活動量とは無関係に幸福感が高まる。自然豊かな場所でできるだけ長く過ごすことが、幸福感を高める」公園へ出掛けて自然に親しむことは、それほど難しいことではない。実践したい。

追い求めると陥る「落とし穴」

「意図的に幸せになろうとすると、ストレスになる。」「幸福感に焦点を当てると、幸福感が下がる」という「落とし穴」が示唆される。「幸福感の重要性を知り、幸福感を得たい意識が高まると幸福感が得にくくなる。幸福感を得たい意識が高まると孤独感がより大きくなりやすいことも分かってきた」何事も中庸か。

長い目で考え、他者にも配慮を

「各瞬間の幸福感に焦点を当てて短期的視点で生きると、抑うつを避けようとすることがプレッシャーとなり、かえって抑うつ的になる」「他者に親切な行為をすると幸福感が高まる」ならば自らのためにも他者に親切になろう。

「生きがい」を持つ重要性

「生きがい」は「人生の目的意識」と同様の健康効果がある。「生きがい」では、女性では、「高収入」「有配偶」「有職」、男性では、これに「自営業」が加わる。他者とのつながることができる「社会」が必要になる。

先進国では「並に幸せ」な日本人

「そもそも『幸せ』の測り方には、本人以外が測定する客観的幸福度とアンケート調査への本人回答に基づく主観的幸福感がある」世界価値観調査の結果は省略するが、OECD諸国ではアイスランド、ノールウェーなど北欧が安定している。日本人は26位と先進諸国では並である。

両立支援と寛容さが大切

「北欧の人々が幸せなのは、私生活を守る両立支援(私生活と仕事の両立を支援する社会制度)が充実し、お互いの多様な私生活を守るべく高い税率を許容し、両立支援を高く維持できるほどお互いの多様性に寛容だからだ。」

早期保育が高める幸福感

 幼児期の発達の改善は、将来の幸福感を高める可能性がある。柴田准教授の調査では「不利家庭出身の場合、0~2歳時に保育に1年以上通うと、30代までの因果効果として、男性は学歴が上昇し雇用と家計が安定し、女性では社会情緒的能力が向上し、それらを通じて幸福感が上昇する傾向があった。早期保育は出身家庭の有利不利に起因する『幸福の機会格差』を縮小させた。また、出身家庭の有利不利にかかわらず、0~2歳保育で、男性は情緒的孤立リスクが2割減り、女性は自殺念慮リスクが3割減る傾向があった。0~2歳児保育は子どもの将来の幸福やウエルビーイングにも貢献する可能性がある。」

日本の課題を解決する方策

「幸福感が高い人は、後々の仕事満足感・収入が高く、人間関係が豊かで、疾病リスクが低く、寿命が長い傾向にある。『両立支援』は全ての人々の高い幸福感との好循環をもたらす。両立支援と保育は、日本を低迷から救うと期待できる。」

政府は4月に「子ども家庭庁」を発足する。経済財政運営の指針「骨太の方針」「異次元の少子化対策」を打ち出した。中長期的視点を視野に持ちつつ喫緊の対策を打ち時間的・社会的に広がりのある幸福感を築きたいものである。

日経記事 2023.2
果物 2023年3月
ヨセミテ国立公園 Wikipediaより
保育園 吹田市 2023.1

 2023.3.10
NGO SESCO 副理事長 深尾幸市

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