NGO SESCO 論考 NO. 24 号 最近気になる3つの問題
― ポリコレの正体・内外留学生減少・高齢受刑者 ―
NGO SESCO 論考 NO. 24 号 最近気になる3つの問題
― ポリコレの正体・内外留学生減少・高齢受刑者 ―
社会問題は数多くあり、簡単に手に負えるものでない。しかし私が最近特に気なる3つの問題について課題提出をしたい。
ポリコレの正体
昨今些か行き過ぎたポリティカル・コレクトネスが多い。言葉狩りが甚だしい。今まで使われてきたスチュワーデスがキャビン・アテンダント。ビジネスマンがビジネスパースン。看護婦さんが看護師さん。まあこの辺りまでは許容範囲であろう。が、メリークリスマスがシーズンズグリ―テイングに統一されるとなると淋しい。
また旧聞ながらオリンピック前の森喜朗・元総理の「女性差別」発言の顛末は何だったのか。氏の発言は本旨とは別の文脈で取り上げられた公開の集団リンチと言えそうだ。今やポリコレや、ダイバシティ(多様性)、ジェンダーへの平等への理解が足りない企業、組織や学校はすぐに抗議活動を起こされたり、ネット上で炎上したり、「商品不買運動」までされかねない。
福田ますみ著『ポリコレの正体』を読んだ。「正しいポリコレ、正しくないポリコレがあると言うつもりはないが、誰が『政治的に正しいか』を判断し、何のためにそれを進めようとしているのか? 正義の仮面の下にあるポリコレの本当の顔を知り、その先にある世界を探ってみたいと思う」と。
目次は、1 ポリコレは、全体主義への一里塚 2 日本のポリコレは、『反日・日本人』要請書 3 BLMの不都合な真実 4 LGBTを“弱者ビジネス”にしようとする人々 5 LGBTイデオロギーとどう向き合うか?事例研究―女子大に男子が入学する日。そして「人種差別反対」「性差別反対」から始まり、ポリレの概念がどんどん拡大されて「批判的人種理論」「制度的人種差別」「LGBT差別反対」「キャンセル・カルチャー」など、推進活動の範囲は際限なく拡がり、アメリカ社会と人々の繋がりを真二つに切り裂いている。
女子競技に元男性のトランスジェンダー女性が初めて参加し陸上競技や重量挙げで金メダルを総なめにした事例も問題。女子トイレの使用の可否が大問題になり犯罪も起きている。何故ポリコレに固執するのか。「いま米国で進行している事態は文化マルクス主義の理論そのものである。なぜなら、ジェンダー、人種、民族における少数派、加えてLGBTなどの弱者の権利をポリコレを盾に過剰に擁護、尊重、異論を封殺して、多数派との間に緊張状態や対立を煽り、米国社会を不安定化させているからだ。」略奪無罪=造反有理の狂気―「毛沢東思想」への強い傾斜。元々マルクス主義者は伝統的な家庭・社会を壊すことが目的だと言うのだが。厄介な時代を迎えたものだ。詳細はやはり本文を読んで頂きたい。
内外留学生減少
内外留学生問題。新型コロナウイルス禍、世界的に人の移動が制限されて留学生たちも立ち往生している。文科省によると日本語指導が必要な児童生徒2021年5月時点で約5万8人おり、10年の1.7倍になった。日本語教育の不十分さも指摘されている。留学生受入れ概況は日本学生支援機構の調査結果によれば、大学院52,759 (53,056)大学73,715(79,826)専修学校70,268(79,598) 日本語教育機関40,567(60,814)である。( )内は2020年度の数。
さて、直近の文科省政策は、ゆとり路線の修正に追い込まれているが受験科目の減縮など入試の軽量化が進み基礎学力の低下に繋がったのではないか。留学だけが学力向上をはかる訳ではないが日本人の留学減少も気になる。日本学生支援機構の2020年度調査によると国捌日本人留学生数のベスト5は、韓国265(7,235)アメリカ240(18,138)カナダ189(9,324)オーストラリア109(9,594)英国89(6,718)である。( )内は2019年度の数。加えて博士課程への進学も減り日本の「低学歴」化が心配される。
科学研究費も年々削られポスドクの課題もある。日本は人口100万人当たり博士号取得が米英独韓中国6ヵ国中唯一減少2007年に276人いた米国での博士号取得者も17年には117人に減少し、国別順位は21位だという。が、悲観ばかりしていても将来はない。光明の一例として早稲田大を幹事校として国公私立の13大学(北海道大 東北 早稲田 東京都立 横浜国立 山梨 名古屋 福井 大阪 徳島 広島 九州 琉球 : シカゴ テネシー ワシントン ミュンヘン 清華 チュラロンコン大)が「パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム」を挙げておこう。
「海外の大学や企業、研究機関とも密に連携し、産学が総力をあげて取り組む環境も整っている。」「これまでに比類なき質と量の教育研究プラットフォームを構築、最高の教育環境と人材交流の場であり、新産業創出に大きく貢献する」と。期待したい。
高齢受刑者の問題
最近受刑者の高齢化が加速していると言われている。高齢者は身体能力が落ち認知機能も低下し、刑の執行どころか介護が必要になる。介護福祉士等の協力を得て、食事や入浴の世話までしなければならない。身寄りのない者や仕事に就けない者は、社会の中で孤立し、年齢に関係なく平等の処遇を受けられ、境遇を同じくする仲間と居られ、寝食の心配も要らないとなれば、社会復帰もままならず、生きる術として刑務所戻りが安易な方法としてある。知己である弁護士浦田益之氏が問いかける。「政府の法制審議会では、犯罪者の処遇を充実させるための法整備を進めており、新自由刑の名称を詰める作業に入った。
有識者の意見交換会には、刑務所収容刑、自由剥奪刑、拘居刑、拘禁刑、拘置刑、収容刑、自由刑、矯刑、矯戒、矯置、禁居、狗役、因戒、因導、懲治、罰居などの名称があり、『刑とは何か』を巡って論じられている。」と述べ「あなたならどんな名称を付けますか」と。普段一般には見落としがちなこうした分野にも目を向けよう。
2022.5.10
SESCO 副理事長 深尾幸市