NGO SESCO 論考 NO.5 『アミルカル・カブラル―アフリカ革命のアウラ』の紹介

1980年代ナイジェリア駐在時代に読んだ『ザンジバルの娘子軍(からゆきさん)』の寸評を契機にアフリカ文化研究者白石顕二氏と長い文通と後年東京での懇談25年間交流した。白石氏は2005年6月に逝去されたが、夫人の富美子さんから2019年7月26日多摩美術大学美術館白石顕二アフリカコレクション「エターナル・アフリカ / 森と都市と革命―アミルカル・カブラルの革命思想とジョージ・リランガの芸術―」の招待状と石塚正英編『アミルカル・カブラル―アフリカ革命のアウラ』(拓殖書房新社 2019年)を受領、当日は石塚氏からも教示を頂いた。カブラルは1950年代から旧ポルトガル領ギニアビサウの独立運動に身をささげたカーポベルテ出身の農業技術者。1974年の独立前年に隣国のギニアの首都・コナクリで暗殺された「建国の英雄」である。本書はカブラルの変革の思想の内実を文化の側面から追い続けている石塚氏により、白石氏との共著として対談や論文を収めた論説集である。

目次は次の通り構成されている。

序章 アミルカル・カブラルと現代 1 カブラルとアフリカ革命 2 [プロムナード討論]

アミルカル・カブラルのアフリカ革命論 3 カブラルのデクラッセ論とギニアビサウの現実 4 カブラルのプチ・ブルジョア論とアフリカ文化 5 [精神の再アフリカ化]を求める抵抗の諸形態 6 母権と無政府―アフリカ平等主義を考える 7 ウジャマァ社会主義とクリエンテス資本主義 補章 アフリカ文化とクレオリゼーション / アフリカ直射思考

今日のギニアビサウは大西洋に面する最貧国で、産業も皆無に近く、南米産コカインの欧州向け中継基地、最大の輸出品はインド向けの未加工のカシュナッツである。この国の独立運動にカブラルが取り組んだ政治・経済・文化による抵抗、武装による抵抗が詳述されている。ゲリラは銃を持った行商人として農民のニーズに答えて「解放区」を拡大していった。が、この戦略は新しい国家像として実現せず、歴史の形成過程で考えだされ、討論しあった思想や文化の豊かさとして次世代に繋がると考へる事が大切であろう。共著者白石顕二もアフリカにとっての真の独立はいまだならずと言う立場から、カブラルがなぜ農民を動かす文化運動として「解放」をめざそうとしたかを現場感覚で解き明かしていく。同氏はカブラル思想のはらむ先駆性に早くから注目していたアフリカ研究者であった。

 注 : 総合詩誌『PO』178号 「アフリカ文化研究者白石顕二と『アミルカル・カブラルーアフリカ革命のアウラ』と」深尾幸市 竹林館 2020.8.20

2020.10.10

SESCO 副理事長 深尾幸市

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