NGO SESCO 論考 NO. 1 「ポストコロナの世界」
NGO SESCO 論考 NO. 1
「ポストコロナの世界」
新型コロナウイルス感染一波もようやく終息が見えてきた。が、今後はウイルスとの共生が余儀なくされよう。これからの世界・日本はどうなるのか。グローバル化の見直し、勤務形態や雇用形態の変化、労働者構成の変化、国際協調より自国優先という現象が生じる。従来は、ヒト、モノ、カネが大量に国境を越えて移動していたが、各国は国を閉めた。日本の製造業の多くが生産拠点を中国に置いていたが、製品や部品が供給されなくなり、中国人観光客による「爆買い」も消えて中国依存の見直しは必至だ。世界保健機構(WHO)、世界貿易機関(WTO)など国連も機能しなかった。国民国家への回帰とともに国際機関は規模縮小になるだろう。従って「新しい生活様式」を求められるとテレワークやオンライン会議は普通になる。自宅で仕事をして必要な時だけ出社する。都市部のオフイス需要は激減する。出張も減り交通機関、新幹線の見直しに繋がると思われる。産業構造は大きく変化する。自宅での仕事が当たり前になれば、都市部の盛り場も縮小する。演劇やコンサートの在り方も再考されカラオケやナイトクラブの存続も怪しい。
一方で通信販売、運送業やIT企業は存在感を増すだろう。学校はオンライン教育を活用し、大学はオンライン授業が基本となれば対面授業との組み合わせで四学期制の導入なども考えられる。
現今の経済見通しは、急激な景気悪化に3つの特徴がある。① 外需やインバウンドは当てにできない。② 個人消費の需要と供給が同時に「蒸発」してしまう。 ③ コロナ禍はいつ終息するのかが見通せない。従って企業への取り組みもドイツ政府がルフトハンザ航空に資本注入したように「どの会社は助けて、どの会社は見捨てるか」という一種の「トリアージ」が必要になってくる。トリアージとは緊急事態の際に、患者の重症度に基づいて治療の優先度を選別する行為で、可能性の低い患者よりも、可能性の高い患者に限られた資源を集中することである。人命にかかわるだけに、そこには重い葛藤が生じる。これを日本企業相手にできるのか。誰がそんなノウハウを有しているのか。ひとまず必要なのはプロ経営者とバンカーによる冷徹な判断であろうか。
2020.6.10
セスコ副理事長 深尾幸市