SESCO理事、医師 カルビ・ブカサさんをしのぶ (深尾幸市)

In memory of Kalubi Bukasa, A board member of SESCO, doctor

2018年11月18日にカルビ・ブカサ(Kalubi Bukasa)さんが急逝された。2週間前に神戸で開催した「アフリカ Meets 関西」のイベントで一緒に行動し、帰路、梅田のホテルのバーカウンターでカクテルを一杯やったばりだった。信じられない。

彼はコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)から1986年に来日。翌年、大阪大学大学院医学部へ留学生として入学し32年間、大阪や徳島での大学教育や NGO SESCO (Send Schools toChildren of The World)の活動に尽力された。

カルビさん(仲間内ではこう呼んでいたし、彼も満更ではなかったようだ)に最初にお目にかかったのが1994年12月。SESCO のシンポジウム、「アフリカの『民族問題』を考える」のパネリストの一人がカルビさんであった。以来、共にセスコの活動アフリカの子ども支援とアフリカを伝える活動を行って来た。後年、私が大学院で「キンシャサにおけるストリートチルドレンの現状と NGO の取り組み」のフィールドワークを実施した際に、キンシャサ大学の教員の紹介やキンシャサの治安・習慣などについて様々な助言をいただいた。2009年5月に東京農業大学で開催された第46回日本アフリカ学会学術大会では共同発表をした。その前夜、在日本 DRC 大使館にマルセル・ムールンバ・チディンバ(Marcel Mulumba Tshidimba)駐日大使(当時)から招待され、カルビさんとチディンバ大使ご夫妻、私の4人で、DRC の経済・社会を中心に談笑した思い出は忘れることができない。

また、カルビさんが徳島大学に勤務されていた時期にはたびたび訪問し、拙論の英文の指導を受け、大阪に来られた際には拙宅での宿泊もあり、交流を深めた。私が自分史『知の散歩道』を発刊したときには対談を試みた。記憶にあるエピソードとして、来日された初期のころ、天気予報の「時々一時雨」がどうして1時になると雨が降るのか不思議でならなかったとか、日本人の友だちと食事に行くと毎回「取りあえずビール」と注文するので長い間、キリンやアサヒと同様にこの言葉はビールの銘柄だと思っていたことなどである。

カルビさんのSESCO での活動は、1992年に「ザイールの屋根のない学校に屋根をかけよう!チャリティーパーティー」を関西ビジネスマンに呼び掛けたことから始まった。以降、ガーナ・チョーコー村に女性のための職業訓練校を建設。阪神・淡路大震災救援物資の輸送協力、被災留学生への教育支援基金設置、さらに、毎年のプチ親子国際会議、アフリカン・クリスマス・ナイト、アフリカンセミナーなど、様々なボランティア活動を継続、発展させた。いつも真面目で、祖国の DRC を思う気持ちは熱かった。

2人の息子さんはパリに住み、お孫さんの話になると破顔そのものになる。ただ一度だけ、しみじみと自らの人生について語り、日本への留学後にキンシャサ大学で奉職する予定が、政変と大学閉鎖の時期が重なり帰国がかなわぬ結果となった、と少し悲しそうに話していたのが印象に残っている。思い出話は限りなく、含蓄のある話題と実践は、カルビさんから良き人生の機会を与えてもらい感謝するばかりである。合掌。

【カルビ・ブカサさん略歴】

1950年、旧ベルギー領コンゴ・レオポルドヴィル(現コンゴ民主共和国・キンシャサ)生まれ。キンシャサ大学医
学部卒業後、1986年に来日。翌年、大阪大学大学院医学部に入学、耳鼻咽喉科博士後期過程を修了。その後、関西医科大学非常勤講師、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部講師、大阪大学医学部医学教育センター特任准教授を務める。SESCO、GA(Groupe Alternative)理事。

深尾 幸市:AJF 理事、NGO SESCO 副理事長、国際ボランティア学会理事。1963年、大日本紡績(現ユニチカ)に入社。国内勤務を経てナイジェリアとドイツに駐在。その後、大阪城南女子短期大学事務局長、大阪青山大学客員教授。2014年、大阪大学大学院人間科学研究科国際協力学博士後期課程単位取得退学。現在、桃山学院教育大学客員教授、、大手前大学非常勤講師、Rogationist College および Philippine Missionary Institute 交換客員教授を務める。著書として『私のアフリカ、私の旅』(竹林館、2018年)、『知の散歩道』(私家版、2014年)、『ボランティアーその理論と実践』(編著、久美株式会社、2004年)。

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